きまぐれ宿日記35
2004/2
ひろみくん
ひろみくん
今、元気にしているでしょうか。
現在のインフォメーションセンターの建物は、辻タクシーの営業所だった。
今は、小野川温泉観光協議会で借りて、情報発信や休憩、足湯などがある憩いの場になっているが、
以前は、辻タクシーの社員が泊まり込んで生活のできる営業形態をとっていた。
そして、ひろみくんは、そこで働いていたお父さんの息子で、
辻タクシーの事務所の奥に暮らしていた子供だった。(と、思う)
俺が小学校低学年の時、たしか高学年くらいのお兄さんだった。
ひろみ君は 大人しい子だった記憶がある。
ある日の夜、
ひろみくんと、そのお父さんが訪ねてきた。
俺に見せたいものがあるのだそうだ。
夏の夜だったかもしれない。
ひろみくんは、かっこいいラジコンカーを持っていた。
その頃にしては、大きめのサイズだった記憶がある。
おそらく 高価な物だったろう。
俺は、すごいような気がしたが、走る所が見たいと思った。
でも、俺も大人しい性格だったので、何も言わずに見ていたと思う。
ひろみくんのお父さんは 「ひろみが見せたいから」と、言っていたが、
おそらく ひろみくんのお父さんが苦労して買ってあげたプレゼントだったのだろう。
今思えば、ひろみくんは友達が少なかったのかもしれない。
営業所に転校してきたのだろうか?とも考えた。
(今さら、事実をつきとめようとは思わないので、想像で書きます)
だから、嬉しさを伝えたい相手が欲しかったのだろうなー と、思う。
今頃になって ふと、思い出したりする事があるのが不思議だが、
あの時、もっと 驚き、喜んであげれば良かったな と、思い返す。
冬のある日、俺に見せたい物があると、ひろみ君とお父さんがやってきた。
連れて行かれた先は、辻タクシーの後ろに 今もある旅館組合事務所の横を通って、その後ろだ。
そこには 旅館組合事務所の屋根からすべり落ちた雪の山があって、
ぽっかり穴が空いていた。
そう、かまくらである。
しかも かなり奥の方まで広い。
そして、カチンカチンに凍っていた 不思議な空間だった。
俺の身長が小さいからか、それとも 本格的に大きく掘ってあったのか、
今となってはさだかではない。
いすの部分もあったけど、冷たそうだったので、座らなかった。
でも、すごい かまくらだった記憶が うっすらとある。
そして、このかまくらも 「ひろみが見て欲しいものがあるから」と、
ひろみ君のお父さんが声をかけてくれたものだった。
そのお父さんは、きっと ひろみくんに喜んで欲しい気持ちと、
ひろみ君が 他の人にも 羨ましがられるような事をしてあげたかったのだろう。
小学校低学年の頃の、薄く霧がかったような思い出だが、
辻タクシーの建物へ行くと、時々 ひろみ君の事を思い出すのだ。
俺は どこかで後悔しているのだろう。 いつも ぼーっと してたから。
もっと、ひろみ君の事を 驚き、喜んであげれば良かったと。
現在は、当時 ひろみ君が生活していたであろう 辻タクシーの奥の空間は、
物置となっていて、イベントで使用した飾り道具が詰め込まれている。
先日の雪灯籠まつりの時も、ここへ来て、荷物の出し入れをした。
昔は、辻タクシーの事務所に入ると 真ん中にストーブがあったのを思い出す。
そこで運転手さん達が くつろいている光景が なんとなく思い浮かぶ。
事務のお姉さんがいた事もあった。
現在は、インフォメーションセンターとなっていて、
辻タクシーの機能している部分は、手回しで 配車センターを呼ぶ電話があるだけだ。
あの頃の記憶。
できるなら、ずっと、大切に覚えていたい。
※P.S.
もう1つおまけに、公民館の思い出がある。
小学校からの帰り道、おしっこがしたくなって公民館でトイレを借りた。
公民館の事務のおばちゃんは、俺の顔を知っていたようだっけ。
トイレから出てきて、帰ろうとした時に 事務のおばちゃんは、俺を呼び止め
お菓子をくれたのだった。
俺は 学校帰りにお菓子を頂くなんて、悪いな〜 と思いつつ貰ったっけ。
バウムクーヘン。
見覚えのない形をした お菓子だった。
その時貰ったお菓子の味が、とても美味しいと感じたのかもしれない。
バウムクーヘンを見ると、公民館での この出来事を 思い出すことがあるのだ。